ANTWERP フランダースの犬とルーベンスの街


ネロとパトラッシュの「フランダースの犬」の物語の舞台であるアントワープという街、子供の頃その情景に思いを駆せたこともある所で、是非訪れてみたかった街の一つです。北海に注ぐスケルト川沿いに発展した、オランダのロッテルダムと並ぶヨーロッパ有数の港町で、鉄道で行くと、ルーベンスゆかりの地である美術都市の玄関口に相応しく博物館のような古色蒼然とした立派な建物に到着します。イタリアで絵画の勉強をしてアントワープに帰った後にバロック最大の画家としての才能を発揮したルーベンスですが、外交官としても活躍したそうです。

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正面に聖母被昇天 左側回廊部にキリストの降架

真っ先にネロ少年があれほど見たがったルーベンスの大作があるノートルダム教会へ行き、「十字架に架けられるキリスト」、「キリストの降架」、「聖母被昇天」、「キリストの復活」をじっくり見てきました。なかでも見る者に迫る人物描写の「キリストの降架」と明るくカラフルな「聖母被昇天」はいつまで見ていても飽きることがありません。感激です。100年前までは幕が掛けられていてこの絵を見たい人は特別に料金を支払わねばならなかったそうで、物語では貧しかったネロ少年は死の直前にこのルーベンスの絵を稲妻の光の中でやっと見ることができるのです。120年前にやはりこれらの絵の前に立ち、この物語を生みだすまでに感動した作家の姿が目に浮かびます。

ベルギー最大のゴシック様式のこのノートルダム教会 (CATHEDRAL OF OUR LADY) の塔にはカリヨンがあって、美しい鐘の音色を聞かせてくれます。物語で絵のコンクールの発表−ネロ少年の絵は落選するのですが−が行なわれた市庁舎はこの教会のすぐ傍にあります。

「フランダースの犬」は日本ではテレビアニメにもなったほどで、たいていの人はこどもの頃に読んだり紙芝居で見たりしたことがあるはずです。ところが、日本ではよく親しまれているこの児童文学が地元のアントワープではつい最近まで全く知られておらず、たまたま観光局を訪れた日本人旅行者の話がきっかけで地元の人々に知られるようになったというのは面白いです。市の観光案内のパンフレットには次の様に書かれています。

A DOG OF FLANDERS IN HOBOKEN

It is almost unbelievable that an English author made Hoboken known in Japan. However it can easily be accounted for. In 1871, after a visit to Antwerp, the English writer, Marie Louise de la Ramee(1839-1908), wrote -under her nom-de-plume Ouida - a tale for children and called it "A Dog of Flanders". The story tells us how a boy Nello and his faithful dog Patrasche, living in Hoboken, went every day to Antwerp with their dog-cart to sell milk. One of the copies of this first edition must have gone to Japan, where it was translated and became -and still is- a best seller. Most Japanese children are acquainted with the tragical adventures of Nello and his dog. In our country the book was almost unknown and we only learned the first facts from a Japanese tourist visiting the Tourist-Office. After much research work all the details became known and finally the book was translated into Dutch and even resulted in a strip! The tale of the two friends has become so popular that the district of Hoboken had a statue erected in their honor as well as a scale model of the mill.

ネロとパトラッシュの住んでいたホーボーケン村には市電で行けます。今では家の立ち並ぶ町になっていますが、ネロとパトラッシュの像、2人が遊んだ公園など観光コースができており、作家のマリールイーズの後を辿ることができます。